6月のはなし
エゾノツガザクラを見にきたんだけど…
おじさんは言った。
キバナシャクナゲと言われなくてよかった。
雪でやられたキバナシャクナゲは今、出汁をとったあとのかつお節をていねいに葉っぱに貼りつけた、そんな感じです。
6月9日から14日の間、旭岳では何度も雪が降り、吹雪でチシマザサが乱舞したあと、花は一つも残らなかった。
花はまだですか…
みんないなくなったよ
山に来る花好きの人たちに、そう答える毎日。
気温も上がらず晴れもせず、見えるのはかつお節ばかり。
もう見られないような気もしていた青空が見えたその日、エゾノツガザクラはその場所でだけ咲いていた。
教えると、ほんの数個の花に、おじさんはとても喜んだ。
おじさんは昔、富良野岳からの縦走の終わりに、それはそれはきれいなエゾノツガザクラの群落を見たそうだ。
それが美化された思い出ではないと、私は知っている。
花畑はもうすぐできるのです。
数年前まで、6月といえば、きれいに晴れることの多い月だったのに。
去年は氷づけになったキバナシャクナゲが、鼻かんだティッシュペーパーみたいになってたな…
そして今日も言われました。
あの花ティッシュペーパーみたいだったね。
晴れていれば決してティッシュペーパーではありません。
花はこれから咲きますよ。
0コメント